アジア大会で活躍した中国代表の呉夢潔さんや陳厚羽さん。
そんな中国選手の名前ですが、バレーボール女子決勝の実況で日本語読みされたことが話題になりました。
特に呉夢潔さんの名前が「ゴ・ムケツ」と実況されたことで、姓と名前の区切りが分かりにくく、「ゴムケツ」と一語のように聞こえるという声が相次いだのです。
では、なぜ中国選手の名前は日本語読みされることがあるのでしょうか。
中国選手の名前が日本語読みされた理由とは?

中国で活躍する選手の名前を日本語読みする慣習がある背景には、長年続いてきた日本の放送上のルールがあります。
NHK放送用語委員会が2008年にまとめた資料では、中国の地名や人名について、原則として漢字で表記し、日本語の音読みをする運用が説明されています。
NHKの資料では、中国の地名・人名を「相互主義」の考え方から「漢字表記・日本字音読み」を原則としていると説明されています。
この「相互主義」とは、同じ漢字を使う国同士で、それぞれの国の読み方に合わせて相手国の地名や人名を読むという考え方です。
つまり、日本では中国の漢字を日本語の読み方で読む一方、中国では日本の地名や人名を中国語の読み方で読むという考え方になります。
NHKの資料では、この慣用が1972年の日中国交正常化後も続いていると説明されています。
そのため、中国選手の名前を日本語読みすること自体は、今回のアジア大会で突然始まったものではありません。
中国選手の名前が日本語読みされた背景には、こうした長年の放送上の慣習がありました。
呉夢潔さんの名前が「ゴムケツ」に聞こえた?

強烈なスパイクで日本を苦しめた呉夢潔さん。
そんな呉夢潔さんですが、実況で名前を呼ばれた際に、思わぬところで注目を集めました。
日本語読みでは「ゴ・ムケツ」となりますが、実況では「ゴ」と「ムケツ」の間がほとんど区切られず、「ゴムケツ」と一語のように聞こえたのです。
実際にSNSでは、「ゴムケツではなくゴ・ムケツ」「ゴで一旦切ってほしい」といった声が相次ぎました。
一方で、中国語での読み方では呉夢潔さんは「ウー・モンジエ」とされ、スポーツナビの登録選手欄でも同様の表記になっていました。
そのため、実況を聞いた視聴者の中には、誰の名前なのか分かりにくかったという人もいたようです。
さらに、同じ中国代表の陳厚羽さんも日本語読みの「チン・コウウ」と実況され、SNSで話題になりました。
呉夢潔さんの名前が「ゴムケツ」に聞こえたことは、名前そのものではなく、姓と名前の区切り方も含めて注目された出来事だったといえます。
なぜ中国選手を中国語読みしないの?

国際大会で中国選手が活躍する中、原音に近い名前で呼んでほしいという声も増えています。
今回も「中国人の日本語読みをやめてほしい」「外国人の尊厳を考えてほしい」といった意見がSNSで見られました。
一方で、中国語の名前を日本語で完全に原音通り再現することには難しさもあります。
NHK放送用語委員会の資料では、中国語には方言や四声があり、日本語の50音だけでは原音を表しきれないという指摘も紹介されています。
中国語には日本語にはない音や声調があるため、カタカナ表記にすると、どうしても本来の発音とは違いが生じる場合があります。
そのため、原音に近い読み方を採用したとしても、それが必ずしも中国語話者にとって完全に自然な発音になるとは限りません。
中国選手の名前をどう呼ぶかについては、分かりやすさや慣習だけでなく、本人の名前をどのように尊重するかという観点も含めて考える必要がありそうです。
中国選手を日本語読みする背景には、単純な「日本人が勝手に読み方を変えている」という事情だけではなく、長年の放送慣行や日本語と中国語の発音の違いがあります。
「1972年に決めた」は本当?

中国人名の日本語読みをめぐっては、1972年の日中国交正常化の際に、両国政府が互いの人名を自国語で読むことを決めたという説もあります。
しかし、この説については注意が必要です。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、この説を調べた事例について、明確な取り決めを示す資料は見つからず「未解決」とされています。
つまり、「1972年の日中国交正常化のときに政府間で名前の読み方を正式決定した」と断定できる根拠は確認されていません。
一方、NHK放送用語委員会の資料では、日本字音読みについて「相互主義」に基づく原則として説明され、1972年の国交正常化後もこの慣用が続いているとされています。
そのため、「1972年に新たなルールを決めた」というより、以前から存在していた慣用が国交正常化後も続いてきたと捉えるほうが適切です。
中国人名の日本語読みについては、1972年に政府間で正式決定されたと断定することはできないようでした。
中国選手の名前は今後どう呼ぶ?

国際大会で世界各国の選手が身近になった現在、選手本人に近い発音で名前を呼ぶことを求める声が出るのは自然な流れともいえます。
一方で、日本語の実況で中国語の発音を完全に再現することには技術的な難しさがあります。
今回の呉夢潔さんについても、原音に近い「ウー・モンジエ」という呼び方と、従来の日本語読みである「ゴ・ムケツ」の違いが大きく注目されました。
放送局や競技団体によって名前の表記や読み方が異なる場合、視聴者が選手を認識しにくくなる可能性もあります。
今後は、選手本人が希望する呼び方を確認したり、選手紹介などで読み方を分かりやすく示したりする方法も考えられそうです。
中国選手の名前については、長年の慣習を踏まえながらも、国際化が進むスポーツ中継の中で、より分かりやすく本人に配慮した呼び方をどうするかが問われています。
まとめ
今回のアジア大会では、中国代表の呉夢潔さんの名前が日本語読みの「ゴ・ムケツ」と実況され、SNSで「ゴムケツ」と一語のように聞こえることへの違和感が広がりました。
中国選手の名前を日本語読みする背景には、NHKなどで長く続いてきた「漢字表記・日本字音読み」の慣用があります。
一方で、1972年の日中国交正常化の際に両国政府が人名の読み方を正式決定したという説については、国立国会図書館の調査では明確な根拠が確認されていません。
今回の話題をきっかけに、中国選手の名前をどのように呼ぶことが分かりやすく、本人への配慮にもつながるのか、改めて考える機会になったといえそうです。
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回の記事もぜひご覧ください。

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